
石井建設の家づくりは、長年ともに現場を歩んできた専門職の職人さんたちに支えられています。今回お話をうかがったのは、タイルと左官の両方を手がける帯広の中島興業所、中島正人(なかじま・まさと)さん。石井建設が新築を始めたごく初期から、20年近くにわたって外壁・土間・玄関まわりの”仕上げ”を担ってきた方です。
15歳から、タイルと左官の両方を
中島さんがこの世界に入ったのは15歳。中学を卒業してすぐ、帯広でタイル工事を営むおじさんのもとで働き始めました。以来、タイル工事会社で十数年。その後、左官職人だったお父さんの会社も継ぎ、タイルと左官の両方の技術を受け継いできました。
タイルと左官は、本来は別の業種ですが、中島さんは住宅中心で、左官とタイルの工事を両方できる職人さんです。
石井建設とのはじまり
石井建設と中島さんの付き合いは、石井建設が起業した2005年。石井社長の実家のリフォーム以来、20年以上のお付き合いです。

中島さんの仕事のいいところは、まず仕上がりが綺麗なんです。その綺麗さが象徴的に表れるのが、タイルの目地です。タイルは一枚ごとにわずかに寸法が違うので、そのまま並べていくと目地の幅が狭まったり広がったりして、ガタついてしまう。技術のある職人でなければ、まっすぐ美しくは納まりません。
たとえば窓まわりのタイル。目地の幅は、通常なら1cmほど取るのが一般的です。でも、1cmだとどうしても美しくない。これを6〜7mmまで詰めると、見違えるほどシャープで、本当に綺麗な見え方になります。ただ、目地を詰めればその分、タイルの割り付けはシビアになる。それでも中島さんは、全体の墨出しをして枚数をきちんと数え、納まりをぴたりと統一してくれます。
こちらが「目地幅はどうする」と相談すれば、「6mmでいきたい」という細かな要望にも「なんとかやってみます」と応えてくれる。そうした一手間を惜しまない姿勢こそ、私が中島さんを長年信頼している理由です。

近年、石井建設では外壁を塗り壁(左官仕上げ)にする提案をすることが増えています。見た目の雰囲気の良さに加え、耐久性・耐候性にも優れているのが理由です。お客様の好みに合いそうならご提案しています。そのため中島さんにお願いする施工範囲も増えています。
塗り壁は、一人ではできない仕事です。1工程に4〜5人。「順番にゆっくり、ではダメなんです。塗り継ぎだらけになってしまうから」。「塗った面が乾いてしまうと、そこで一日が終わってしまう。だからその日のうちに一気に塗り上げるだけの人数を揃えて臨みます」と中島さん。
工程は、まず壁にラス網を張り、下塗り、中塗り、そしてコテで色をつけていく。何度かに分けて塗るのには理由があります。一気に厚くベタっと塗ると、ダレてしまい、表面にひびが出やすい。そこであえて下塗りの段階で先にひびを入れて落ち着かせ、それから中塗りに移る。こうすることで、仕上がりのひびを抑えているのです。

北海道の冬は、タイルも左官も外仕事ができません。気温がマイナスになると、施工中にモルタルが凍ってしまい品質を確保できなくなるためです。
たとえば、家の基礎まわりの外周仕上げ部分は、家づくりの最終局面で左官で仕上げることが多い部分です。ですが、家が完成したのが冬であれば、その基礎まわりの仕上げだけは凍害のリスクが発生するので暖かくなるまで施工しにくい状況になります。
このように、北海道の左官、タイル職人は、冬の間は仕事が少なくなるので本州へ出稼ぎに行くことが多かったと思います。
ひび割れは、必ずしも”欠陥”ではない
基礎や壁のひびを見て、施工不良じゃないかと心配される方もいます。けれども、モルタルは水で練って施工する材料。乾燥すれば収縮し、痩せて、ひびが入るのはある程度は物の性質として避けられない。大事なのは、ひびの”質”を見極めること。明らかに太いひびには原因がありますが、細いひびは、水がその内側にまで入っていかなければ問題にはなりません。窓まわりのような力のかかりやすい弱い場所には入りやすい——そうした構造まで理解したうえで、ひびをコントロールするのが職人の仕事です。
気温などを気遣いつつ丁寧な施工

左官の土間やコンクリートの仕上げは、気温・厚み・生コンの配合に大きく左右されます。左官の仕上げは、材料がほどよく締まってきたところをコテで押さえることで、表面が平らに整います。ところが柔らかすぎるうちにコテを当てても、押さえが効かず、かえってコテムラが残ってしまう。逆に気温が低いといつまでも固まらず、仕上げに入れない。ちょうどいい硬さのタイミングは、その日の気温や材料の状態しだいで刻々と変わります。 中島さんいわく、左官にとって一番いいのは、乾きがゆっくり進む春や曇りの日だそうです。
タイルは既製品でも、一枚一枚の寸法が完全には揃っていません。焼き物ゆえに1mm単位で違ったり、わずかに反っていたりする。だからこそ、施工の前の”墨出し”と”割り付け”に時間をかけます。
見えるところに小さな半端が入らないよう、全体の並びを計算し、必要な分は切って揃える。「割り付けさえ終われば、施工自体は早いんです」。時間をかけるべきところに時間をかける——その段取りが、仕上がりの美しさを決めています。
職人という仕事
「定年退職がないのが、この仕事のいいところかもしれませんね」と中島さん。「やる気さえあれば、60歳、70歳まで現場に立てる。最近は老眼で細かいところが見えづらくなってきた」と笑いながらも、その手は今日も石井建設の家の”見えるところ”を美しく仕上げ続けています。

玄関のタイル、土間の仕上げ、そして味わいのある塗り壁の外観。石井建設の家に宿る手仕事の質感は、中島さんのような職人さんの積み重ねに支えられています。
